CASE 1
被災地からの報。
2016年4月14日21時26分。熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード6.5の直下型地震は、震度7を観測した益城町を中心に、同地方に甚大な被害をもたらしました。私たちの職場も例外ではなく、壁にはひびが見られ、パソコンはひっくり返り、その有り様を見た私たちは、しばし茫然と立ち尽くしてしまったことを今でもよく覚えています。被災した直後は、まだ電気も通わぬ状態でした。それでもなんとか電話だけは、と回線を開けて業務を再開。「えがおさんだいじょうぶ?」全国各地から頂くあたたかいお電話に、どんなに励まされたことでしょう。それからさらにひと月ほどが過ぎた、ある日の午後のことでした。「いつでも構いませんので」「気にされなくて大丈夫ですので」フロアに通るその声の主は、入社2年目のラピネス。お相手は30代の奥様。地震の混乱に紛れてお支払いが滞っていたことを気にかけ、振込用紙の送付を希望されていました。自宅が倒壊の危機にあり、避難所となる近所の小学校からお電話されていたそうです。

用件はとっくに済んでいました。ところがそのラピネスは、どうしても電話を切ることができません。こんな非常事態。気ぜわしく、落ち着かず、気持ちが疲れきったこんなときに、「借りをつくってしまった」などと、つまらぬことに気持ちを割かないでいただきたい。そう思ってのことでした。支払い期限を伸ばすなんて判断、勝手にしちゃダメだ。たいへんな状況だから、早く電話を終わらせてあげるべきだ。思えばそんな迷いもあったかもしれません。でも、言わずにはおれませんでした。「いつでも構いませんので」「本当にお気をつけて」かけ続ける言葉の向こうで、あるとき堰を切ったようにその奥様は泣き出してしまったといいます。後にラピネスは先輩から教わりました。お客様のためにしたこと、言ったことなら、どれも全部間違いじゃないということを。「元気を頂きました」「私こそ元気をもらいました」悲しいことがいっぱいあったけど、泣いて笑って終わったそのお電話は、一生忘れられない思い出になりました。